2012年3月14日 (水)

国営海の中道海浜公園にみるユニバーサルデザインの取り組みに思う

国営海の中道海浜公園にみるユニバーサルデザインの取り組みに思う

国営海の中道海浜公園(以下当公園)では、平成20年からの5ヵ年の整備プログラムの一つである「全ての人が安心して楽しく利用できる」ことを目標にしたユニバーサルデザインについて、「ユニバーサルデザイン検討委員会」(以下検討委員会)を設けて取り組んでいます。ここではその取組みの考え方や内容について紹介します。

その前に当公園の主な特徴について少しお話しましょう。当公園は1981年に開園した国営公園で、次のような特徴を持っています。

①約6kmに及ぶ美しい白砂青松の玄界灘と博多湾に囲まれた広大な敷地(約540ha※現供用開始エリアは約292ha)を有している。

②その広大な敷地に、1981年の開園から今日までに、動物の森、大芝生広場、サンシャインプール、ワンダーランド、フラワミュージアム、環境共生の森などの特色のあるエリアを整備し供与している。

③これらのエリアは、緑や水、花といった自然的要素で構成された当公園ならではの広大な風景の中に立地し、多様な園路でネットワーク化されている。

④ユニバーサルデザインについては、早期の対応が求められたトイレや休憩施設などが順次整備されてきている。

それでは検討委員会で取り組んできた考え方と具体的な内容について紹介しましょう。検討委員会の最初の取り組みは、当公園の現状を、「全ての人が安心して楽しく利用できることを目的としたユニバーサルデザイン」の目でチェックすることでした。

この取り組みは、どのようなところにどのような課題があるのか、そしてユニバーサルデザイン化に向けてどのようなプログラムが必要なのかを明らかにするためのものです。調査は、一般利用者、福祉協会の方々、留学生などの協力を得ながらアンケート調査と現地でのモニター調査を行っています。

調査の結果として、各エリアに設置されている諸施設の利便性や安心面からのユニバーサルデザイン化の必要性、公園が広過ぎてなかなか目的地に行けない、自分の位置が確認できないといった情報提供の不十分さによる公園自体の分かりにくさ、移動空間で楽しさが実感できない、夏の暑さ対策が十分でない、休む場所が少ないなどの課題が浮かび上がりました。

このようなユニバーサルデザインに関する現状評価を踏まえて検討委員会では、課題を二つに分けて5ヵ年で検討するアクションプログラム(行動計画)をまとめました。その一つは諸施設の利便性を向上させるハード対策であり、もう一つは情報提供を充実させるソフト対策です。

ハード対策は、利用者のアクティビティ(利用の仕方や楽しみ方)をベースに検討し、対策を進めています。整備に当たっては、特殊なものは造らない、みんなが使え楽しめるように工夫する、景観や自然環境に支障をきたさないようにする、五感で感じることを大切にするなどに配慮しています。ハード対策に関係するアクションプログラムとしては、「五感で感じるおすすめルートの設定」、緑陰のある「夏の暑さ対策」、「施設(トイレ、ベンチ、授乳室の確保)の利便性の向上」などを取り上げています。

一方、ソフト対策は、施設そのものの情報に限るのではなく、施設の利用の仕方や楽しみ方の情報、ホスピタリティの向上につながるサポート体制に関する情報等が分かりやすい方法で情報提供することを目的としています。ソフト対策に関係するアクションプログラムとしては、「Webサイトの改善や公園ガイドなど情報システムの再構築」、公園の円滑な利用、案内のための「通り名での道案内」の導入、案内板や標識などの「サインシステムの再構築」「公園スタッフのサポート技術の向上」、誰でも参加できる「参加型プログラム」の提供などを取り上げています。

以上のような多様なアクッションプログラムを具現化する上で、検討委員会が重視した点は、当公園の特徴である色々な場所に存在する自然環境や風景が、全ての利用者の過ごし方や楽しみ方の中で活かせるように、また安心感が与えられるように配慮していることでしょうか。例えば、トイレの整備については、全ての利用者にとって生理的に問題のない間隔で多目的トイレ、ユニバーサルデザイントイレを配置し、安心感を持っていただくようにしています。

通り名での道案内では、通りの立地特性や景観特性などに配慮した名前を付け、広大な公園内での自分の位置や目的地が分かり易く、また全ての利用者が安心して楽しみながら移動できるよう配慮しています。

夏の暑さ対策では、園路の車椅子や子供達のことを考えて遮熱舗装にし、休憩し易い場所にある高木は、下枝を切って緑陰を確保しその下にベンチを置いて休めるようにしています。また、風景の素晴らしい空間にもベンチを置いて楽しめるようにしています。

サイン計画では、案内性を高めるために見通しや案内する対象がよく見えるように樹林の整枝をするなど風景の再構築を試みながら乱立している標識や案内板をできるだけ減らすように試みています。

また、情報提供の取り組みの具現化では、全ての利用者の立場に立ったWebシステムのあり方に配慮して、例えば、当公園に来られる事前の情報として、全ての人に対応する参加型プログラムの利用の目安や四季を通してのお勧めルートの紹介などを提供しています。

検討委員会で取り組んできたもう一つの重要なことは、これまでに紹介してきたユニバーサルデザインの取り組みの内容について、利用者の意見を聞きながらそれぞれの取り組みの効果や達成度を適宜評価し、今後の当公園の更なる向上を目指した改善・更新のためのスパイラルアップ(継続的に改善していくこと)のシステムを造ったことでしょうか。

以上紹介してきた海の中道海浜公園のユニバーサルデザインの取り組みの考え方や内容を通して、公園のユニバーサルデザインの取り組みの考え方がお分かりになったと思います。この中には、ユニバーサルデザインの目標に利便性や機能性を重視する交通施設や建物の場合とは違って、公園の場合は、「楽しく利用する」という目標が加わることによる取り組みの難しさと、それぞれの公園が持っている固有の特徴、例えば、立地環境、規模、使われ方、植物や水などの自然的要素の存在などを、ユニバーサルデザイン化の中で配慮することの大切さも含まれていると思います。

全ての利用者に安心して楽しく利用できるようなユニバーサルデザインの適切な展開は、その公園ならではの風景の保全や全ての利用者に満足感を与えることに繋がり、公園の再生や活性化にとって有用な手段の一つになるのではないだろうかと思ったりしています。

国営海の中道海浜公園ユニバーサルデザイン検討委員会委員長

九州芸術工科大学・神戸芸術工科大学名誉教授

                              杉本正美

2012年1月18日 (水)

公園のユニバーサル化を支援するには?。。。。

昨年末から、都市公園のユニバーサル化を進めるためのガイドライン改訂のお手伝いをしています。都市公園、ちょっと一般の方々にはなじみのない言葉かもしれませんが、ざっくり言って‘まちなか’にある公園のことでして、これらはユニバーサル化を進めることが法律で義務づけられているのです。このたび、おおもとのバリアフリー法の基本方針が改正されたので、これを機にガイドラインも平成244月の公開に向けて書き換えようと素案づくり作業が進められています。が、これがなかなか一筋縄ではいきそうもありません。

改訂素案づくりに先立ち、現状の課題が丁寧に調べられています。一般的に指摘されるのは、車いすへの対応に偏りすぎなのでは?といったことなのですが、私が気になったものとしては、そもそも都道府県や政令市以外の小規模市町村では、ガイドラインがあまり参照されていない・・という点です。この原因は推し量るしかありませんが、より一層わかりやすく、具体的で、しかもこのご時勢ですので、あまりお金や労力をかけないでも実行できる、やりくり上手的な参考事例がのぞまれることがわかります。また、公園が丘陵地などに立地している、あるいは歴史文化、自然環境に対して特に配慮を必要とする場合など、一般的な整備基準が適用できないケースについての考え方を記載してほしいとの要望も多く挙げられています。公園ユニバーサル化の現場においては、地形や歴史文化、自然環境などといった要素とトレードオフの関係になってしまうケースが多いため、この議論は避けては通れない宿命にあります。このような話題の際に重要となるキーワードに‘妥当な配慮’というものがありまして、英語で言うところの’reasonable accommodation’の日本語訳なのですが、最近、国内でも、障がい者等の就労支援や教育機会の提供といった分野で盛んに議論されています。

例えば、

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/046/index.htm

http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.html#bukai10

本来この概念は就労における障がい者の差別禁止の枠組みで使われることが多く、日本ではあまりなじみのないものなのですが、2006年に国連で採択された障がい者の権利条約では、‘妥当な配慮’の提供義務が規定されまして、現在、国内では障がい差別禁止法の制定が検討されており、近い将来、公的機関等において‘妥当な配慮’を提供しないことは、許されなくなるかもしれません。

一方、このような(底上げ)も大事ですが、ユニバーサル化の取り組みに動機づけを与える・・いろいろアイデアを出してもらえるようにする・・といった取り組みも大変に重要です。やらなければならないからやる・・というスタンスの仕事には、一定の限界がありますからね・・・本当は(もうかる)などが一番良いのかもしれませんが、そこまでいかなくとも、障がいのある人が参加者に含まれるイベントを最低1回は行うこと、あるいは、環境アセスメントなどで行われているように、手続きの透明化を図るなどの仕組みも良いのかもしれません。先日、とある講座受講生の方と話をしていたときに、(障がいのある人)はどのような人たちだと思われますか?と尋ねると、その方は、(先を行く人)と答えられました。意味するところは、自分たちもいずれ年をとると、いろいろな身体、あるいは認知能力に制限がでてくると思うが、それを先んじて実践している方々ということのようでした。ユニバーサルデザインというとどうしてもみんなに優しいといった文脈で語られることが多いのですが、これからは、このみんなに優しいというのから(先を行く人)に学ぶといったものに変えていく必要があるような気がします。

ではまた。

               国営海の中道海浜公園ユニバーサルデザイン検討委員    

兵庫県立大学大学院 緑環境景観マネジメント研究科 

教授 美濃 伸之

 ○国営海の中道海浜公園におけるユニバーサルデザインの取り組み

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ユニバーサルデザイン検討委員による園内の視察     第14回ユニバサルデザイン検討委員会

2011年11月10日 (木)

“心 ほっこり”

“心 ほっこり”

 九州新幹線の車内は、想像していた以上に多くの観光客であふれていた。自分の座席を探しながら歩を進めていたその時だった。後ろから押されて、つんのめってしまった。とっさに座席の肩にある取っ手を握り締めた。その取っ手は木製で、手でつかむのにちょうど良い形状だ。よく見ると、取っ手には点字が打たれている。車掌さんに聞くと、窓側と通路側を記してあるのだという。この点字の取っ手に込められた想いに、乗客でごった返す車内もどこかしら心温まる空間になったのだった。

 単純かもしれないが、「バリアフリー」とは、このような心がほっこりする事象を具現化することではないだろうか。

 もう20年ほど前のことだが、障がい者の皆さんと一緒にイタリアを旅した。皆さん車いす生活を送っておられた。私は取材を兼ねて、車いすを押すボランティア要員として参加した。

 イタリアの街は、どこに行ってもごつごつした石畳。車いすは上下左右に揺れながら、少しずつ前に進ませた。とは言え、時折、石畳の段差に車輪がはまり思うように動けなくなった。土産店に入ろうにも階段を上らなければならない。ホテルに入るには、段差がある。こうなると、当然、懸命に車いすを押すのだが、頑として動かないことも多々あった。

 だが、このように立ち往生しているとき決まって、日本ではあまり見受けられない〝救世主〟が現れるのだった。どこからともなく、すーっと数人の人たちが現れ、車いすをひょんと持ち上げてくれたのだ。

 バリアフリーとは、社会参加を困難にしている制度的、心理的なすべての障壁の除去、という意味でも用いられる。妊婦も、松葉づえの人にも、荷物を持って移動している人にも、心のバリアを取り除き、困っている人にさっと手を差し伸べることが大事なのだと思う。そのような行為が、きっと、「外」へ、と踏み出させる勇気を与えるに違いない。

いま、この海の中道海浜公園で、バリアフリーの公園づくりが進められている。「公園との出合いから喜びと自信が生まれた」。1人でも多くの方に、そう感じていただきたいと切に願っている。 

国営海の中道海浜公園ユニバーサルデザイン検討委員

西日本新聞社 西日本会事務局次長 山形 紀子

2011年10月28日 (金)

リニューアルエリアでのユニバーサルデザインの取り組み

海の中道海浜公園では、公園にお越しになる全ての皆様が安全で快適に
公園を利用できるようソフト・ハード両面からユニバーサルデザインに
取り組んでいます。今回ユニバーサルデザインの『ハード整備の取り組み』として、
平成23年10月1日にリニューアルオープンしたワンダーワールドでの整備例をご紹介します。

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まず始めにリニューアルエリアのパノラマ写真です。
今回のリニューアルでは海の中道を象徴する玄界灘の白い砂浜と
青々とした松(白砂青松)の景観をイメージした雰囲気づくりを心掛けました。

今回のリニューアルで一番人気のくじらぐも“ふわんポリン”ですが、
2基のうち1基は山の高さを1.7mに抑え、3才~6才の小さい
お子様やお体の不自由な方を優先した遊具としております。
誰もが体力に合わせて快適に遊ぶことができるユニバーサルデザイン遊具です。

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※3才~6才の小さいお子様やお体の不自由な方がご利用の際は、必ず保護者が付き添ってください。

くじらぐも“ふわんポリン”で遊ぶお子様を日陰で快適に見守ることができる
屋根付き休憩所(日よけ)です。
西日を遮るカーテンもあり、夏場の暑い時期にはドライミストで暑さを
しのぐこともできます。
今回のリニューアルでは、お子様に喜んで頂くことはもちろんですが、
お子様を見守る大人もゆったりと快適に過ごして頂くことが出来ることを心掛けました。

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日よけには可動式のイス・テーブルをご用意していますので、
グループのお客様が人数に応じて自由に組み合わせること、車イスのお客様も
一緒に同じテーブルでくつろいで頂くことができます。
お子様も使いやすいようベビーチェアもご用意しています。

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こちらは海外の方も読むことのできるくじらぐも“ふわんポリン”の注意喚起サインです。
日本語のほか、英語・韓国語・中国語の4カ国語で読むことができます。

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看板の背後に見える砂はドームの安全のためにあります。
砂は公園の玄界灘側の海岸から採取した海砂を利用していますので、
砂の粒子がとても細かく、光に当たると白く輝きます。

裸足で遊んだ後に汚れを落とす足洗い場は車イスの方も利用できるよう段差を
なくしています。8つのシャワー蛇口の1つはホースになっていますので、
手の届かないところまで洗い流すことができます。

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水飲み場は車イスをご利用の方も心理的圧迫感なく飲み口に接近できるよう工夫しました。
また高齢者の方やお子様にも使いやすいように手摺を取り付けています。
お子様にも使いやすいよう踏み台もご用意しています。

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くじらぐも“ふわんポリン”は12才以下専用(但し付き添いの大人のみ利用可能)ですが、お子様を見守る大人の方も楽しんで頂けるよう、年齢制限のない『足つぼ舗装』や『健康器具』をご用意しています。

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カラフルな不思議な形のアイテムを子どもたちが自由に組み合わせて遊び場を創ることができる新遊具『スナッグ』は、よちよち歩きの小さい子も楽しく遊ぶことのできるブロック遊具です。

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リニューアルエリアでは車イス、ベビーカーなどでの走行に影響が出ないよう、段差はありません。また、振動が少なく、スムーズに車輪が動くように僅かな隙間も作らないインターロッキングブロックを活用しました。

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今回のリニューアルで白砂青松の砂をイメージした舗装は、
実は夏場の暑さ対策の目的で塗装したもので、アスファルト舗装より10℃以上温度を
下げる効果があります。

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黄色の舗装は、走り回っても足に負担の少ない砂入りゴムチップ舗装です。
アスファルト舗装より熱を下げる遮熱効果もあります。

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暑さ対策として、夏場の暑い時期には打ち水で涼むことができます。
これも誰もが楽しめるユニバーサルデザインの試みです。

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遊べる噴水の周りにはパラソルの日よけとイス・テーブル、コンクリート製の長いすを
ご用意していますので、大人の方もゆったり快適にお子様を見守ることができます。

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コンクリート製の長いすには座る・立つ動作を手助けしてくれる手すりを設置しております。
手すりを利用して芝生の上に横になることもできます。

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以上が今回のリニューアルで取り組んだユニバーサルデザインの一部ご紹介になります。
ハンディキャップの有無だけでなく、子どもから大人まで幅広い世代の方も快適に利用いただけるようになった
遊びの宝庫“ワンダーワールド”へ、皆様のご来園を心よりお待ちしております!

                                                        海の中道海浜公園事務所 調査・品質確保課 田中聡