国営海の中道海浜公園にみるユニバーサルデザインの取り組みに思う
国営海の中道海浜公園にみるユニバーサルデザインの取り組みに思う
国営海の中道海浜公園(以下当公園)では、平成20年からの5ヵ年の整備プログラムの一つである「全ての人が安心して楽しく利用できる」ことを目標にしたユニバーサルデザインについて、「ユニバーサルデザイン検討委員会」(以下検討委員会)を設けて取り組んでいます。ここではその取組みの考え方や内容について紹介します。
その前に当公園の主な特徴について少しお話しましょう。当公園は1981年に開園した国営公園で、次のような特徴を持っています。
①約6kmに及ぶ美しい白砂青松の玄界灘と博多湾に囲まれた広大な敷地(約540ha※現供用開始エリアは約292ha)を有している。
②その広大な敷地に、1981年の開園から今日までに、動物の森、大芝生広場、サンシャインプール、ワンダーランド、フラワミュージアム、環境共生の森などの特色のあるエリアを整備し供与している。
③これらのエリアは、緑や水、花といった自然的要素で構成された当公園ならではの広大な風景の中に立地し、多様な園路でネットワーク化されている。
④ユニバーサルデザインについては、早期の対応が求められたトイレや休憩施設などが順次整備されてきている。
それでは検討委員会で取り組んできた考え方と具体的な内容について紹介しましょう。検討委員会の最初の取り組みは、当公園の現状を、「全ての人が安心して楽しく利用できることを目的としたユニバーサルデザイン」の目でチェックすることでした。
この取り組みは、どのようなところにどのような課題があるのか、そしてユニバーサルデザイン化に向けてどのようなプログラムが必要なのかを明らかにするためのものです。調査は、一般利用者、福祉協会の方々、留学生などの協力を得ながらアンケート調査と現地でのモニター調査を行っています。
調査の結果として、各エリアに設置されている諸施設の利便性や安心面からのユニバーサルデザイン化の必要性、公園が広過ぎてなかなか目的地に行けない、自分の位置が確認できないといった情報提供の不十分さによる公園自体の分かりにくさ、移動空間で楽しさが実感できない、夏の暑さ対策が十分でない、休む場所が少ないなどの課題が浮かび上がりました。
このようなユニバーサルデザインに関する現状評価を踏まえて検討委員会では、課題を二つに分けて5ヵ年で検討するアクションプログラム(行動計画)をまとめました。その一つは諸施設の利便性を向上させるハード対策であり、もう一つは情報提供を充実させるソフト対策です。
ハード対策は、利用者のアクティビティ(利用の仕方や楽しみ方)をベースに検討し、対策を進めています。整備に当たっては、特殊なものは造らない、みんなが使え楽しめるように工夫する、景観や自然環境に支障をきたさないようにする、五感で感じることを大切にするなどに配慮しています。ハード対策に関係するアクションプログラムとしては、「五感で感じるおすすめルートの設定」、緑陰のある「夏の暑さ対策」、「施設(トイレ、ベンチ、授乳室の確保)の利便性の向上」などを取り上げています。
一方、ソフト対策は、施設そのものの情報に限るのではなく、施設の利用の仕方や楽しみ方の情報、ホスピタリティの向上につながるサポート体制に関する情報等が分かりやすい方法で情報提供することを目的としています。ソフト対策に関係するアクションプログラムとしては、「Webサイトの改善や公園ガイドなど情報システムの再構築」、公園の円滑な利用、案内のための「通り名での道案内」の導入、案内板や標識などの「サインシステムの再構築」「公園スタッフのサポート技術の向上」、誰でも参加できる「参加型プログラム」の提供などを取り上げています。
以上のような多様なアクッションプログラムを具現化する上で、検討委員会が重視した点は、当公園の特徴である色々な場所に存在する自然環境や風景が、全ての利用者の過ごし方や楽しみ方の中で活かせるように、また安心感が与えられるように配慮していることでしょうか。例えば、トイレの整備については、全ての利用者にとって生理的に問題のない間隔で多目的トイレ、ユニバーサルデザイントイレを配置し、安心感を持っていただくようにしています。
通り名での道案内では、通りの立地特性や景観特性などに配慮した名前を付け、広大な公園内での自分の位置や目的地が分かり易く、また全ての利用者が安心して楽しみながら移動できるよう配慮しています。
夏の暑さ対策では、園路の車椅子や子供達のことを考えて遮熱舗装にし、休憩し易い場所にある高木は、下枝を切って緑陰を確保しその下にベンチを置いて休めるようにしています。また、風景の素晴らしい空間にもベンチを置いて楽しめるようにしています。
サイン計画では、案内性を高めるために見通しや案内する対象がよく見えるように樹林の整枝をするなど風景の再構築を試みながら乱立している標識や案内板をできるだけ減らすように試みています。
また、情報提供の取り組みの具現化では、全ての利用者の立場に立ったWebシステムのあり方に配慮して、例えば、当公園に来られる事前の情報として、全ての人に対応する参加型プログラムの利用の目安や四季を通してのお勧めルートの紹介などを提供しています。
検討委員会で取り組んできたもう一つの重要なことは、これまでに紹介してきたユニバーサルデザインの取り組みの内容について、利用者の意見を聞きながらそれぞれの取り組みの効果や達成度を適宜評価し、今後の当公園の更なる向上を目指した改善・更新のためのスパイラルアップ(継続的に改善していくこと)のシステムを造ったことでしょうか。
以上紹介してきた海の中道海浜公園のユニバーサルデザインの取り組みの考え方や内容を通して、公園のユニバーサルデザインの取り組みの考え方がお分かりになったと思います。この中には、ユニバーサルデザインの目標に利便性や機能性を重視する交通施設や建物の場合とは違って、公園の場合は、「楽しく利用する」という目標が加わることによる取り組みの難しさと、それぞれの公園が持っている固有の特徴、例えば、立地環境、規模、使われ方、植物や水などの自然的要素の存在などを、ユニバーサルデザイン化の中で配慮することの大切さも含まれていると思います。
全ての利用者に安心して楽しく利用できるようなユニバーサルデザインの適切な展開は、その公園ならではの風景の保全や全ての利用者に満足感を与えることに繋がり、公園の再生や活性化にとって有用な手段の一つになるのではないだろうかと思ったりしています。
国営海の中道海浜公園ユニバーサルデザイン検討委員会委員長
九州芸術工科大学・神戸芸術工科大学名誉教授
杉本正美
















